研究内容

森の足元の(特に根に関わる)微小生物の
多様性(どういう種類?)や役割(養水分吸収)を
形態、化学分析、DNAをヒントに調べています。

樹木の根系に生息する菌根菌

菌類の中には,植物の根の中に侵入し,共生をするようになったものもいます。このように 植物の根と菌類が共生し,互いの組織を入り組ませた構造をよぶのに,ギリシア語由来の菌類を意味する「myco」と根を意味する「rhiza」を一緒にして,「mycorrhiza」(菌根)というようになりました。 そして,「菌根」を形成する菌類のことを「菌根菌」といいます。しかしひと口に「菌根」と言っても,実はさまざまなものが含まれるのです。現在は,菌根を形成する菌と植物の種類,菌根の構造の違いなどにより 7種類に分類されています(VA菌根,外生菌根,内外生菌根,エリコイド菌根,アーブトイド菌根,モノトロポイド菌根,ラン菌根)。森林生態系の主要構成要素である木本類のほとんどが外生菌根を形成します。 ブナ科(Fagaceae)やマツ科(Pinaceae)は主要な外生菌根を形成する樹木です。
 植物と外生菌根との関係は多く研究されていますが,ここでは一部を紹介します。まず外生菌根から土壌中に伸びた 「菌糸によって養分(特にリン酸)が吸収され,植物に運ばれます。菌糸によって養分が吸収できるということは, 吸収面積が飛躍的に増えることを意味します。外生菌根から無数に伸びる菌糸は,数10cm~数mになるため, 吸収できる土壌の範囲が大きく広がります。さらに菌糸は根毛よりもはるかに細いため,根が侵入できないような 土壌中の小さな隙間にも入っていくことができます。また菌鞘がすっぽりと根端を覆ってしまうことによって, 土壌病原菌が植物の細胞内に侵入することを物理的に防いでいるとも言われています。この土壌病原菌に対する防御作用は, 芽生えの生存などに大きく関わってくると考えられています。

樹木の根系に生息する内生菌

内生菌(endophytic fungi)は生きた植物の内部で病気を起こさずに生息する菌類のことです。日本ではあまりなじみのない言葉ですが, 内生菌は世界的に注目を集め, 研究が盛んにおこなわれています。比較的古くから内生菌の存在は知られていましたが, 重要なものではないと考えられていました。
 近年の研究から,大部分の樹木の根に内生菌は生息し,根組織の物理的耐性や化学的耐性を向上させたりすることが知られてきました。さらに,根に内生菌が存在すると植物体の生育が良くなると言われています。しかし,逆に内生菌が存在することで植物体の生育を阻害するという報告があります。このように樹木と内生菌は密接にかかわっていますが,依然として樹木との相互作用で不明な点も多くあります。当研究室では樹木の根から分離培養した内生菌を用い,樹木への接種試験を通して内生菌と樹木の相互作用の解明に取り組んでいます。

林床植物の根系に生息する菌根菌

林床には十分な量の光が届きにくく植物の生育にとって不利な環境となっています。そのような環境でも生育可能な林床植物の中には興味深い生態を有するものがいます。ツツジ科に属するイチヤクソウやギンリョウソウは葉緑素をほとんど,もしくは全く保持しておらず,自身の根に定着する菌根菌から土壌の栄養分だけでなく炭素源も獲得しています。この光合成に頼らない栄養獲得様式を菌従属栄養性(Mycoheterotroph)と呼ばれ,暗い林床への植物の適応の1つと考えられています。さらに,イチヤクソウの種子は約0.3mmと微小で,種子内の栄養が少ないため発芽には菌根菌の感染,定着が必須であると考えられています。このような興味深い生態を持つ菌従属栄養性植物の謎を解明するため,菌根菌種の特定や養分獲得様式の決定を行っています。

森林土壌に生息する線虫類

下記サイトをご参照ください。

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